意識の変容と脳のネットワーク

シロシビンは、幻覚作用だけでなく、深遠な心理的体験ももたらします。私自身、またクライアントの方のセッションにおけるシロシビン体験の大きな特徴は、深淵な心理体験なのです。それは、セッション前には想像もつかない形で私たちの心に現れます。時に睡眠時の夢に似たような感覚でもありますが、夜見る夢とは違い、通常の意識状態で知覚する現実よりも、よりリアルに感じるクオリアな心理体験です。

これは言葉による説明では言い表しようのない体験、また言葉より先にある経験と言ってもいいでしょう。この、よりビビッドでクオリアな体験が、ガイドと共にある安全なセーフティースペースで体験されることによって、セッション後の心の充足、ひいてはアディクションや、うつ病を直してしまう力がある。それは一体どうしてなのか、という近年の研究がさまざまな研究者によって行われています。

こちらは、2023年のオーストラリアにおけるシロシビン、および他のサイケデリックを使った臨床実験の研究です。

Default Mode Network Modulation by Psychedelics: A Systematic Review

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10032309

研究では、サイケデリックセッション時の脳波の測定によって、シロシビンは脳の特定の領域、特にデフォルトモードネットワーク(DMN)を司る領域が優位でなくなることが検証されています。デフォルトモードネットワークとは私たちが日常生きていく上で、必要な脳の働きで、それは「わたし」という自我のとも大きく関係しています。シロシビンセッション時の変性意識状態では、このデフォルトモードネットワークが優位ではなくなるのです。今までいつもの考え方で来た私たちの脳の部位が優位でなくなると、いつも使っている脳の部位とは違う箇所の働きが活性化されます。それは、いつもの考えとは違う新たな視点を私たちにもたらしてくれるようになります。その体験と気づきによって、今まで同じ思考回路に陥りがちな私たちの脳に、その部位の休息と、今までとは違った思考回路をもたらしてくれることにつながります。

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Picture by Springer Nature

安静時に測定されたDMNの脳領域。セッション中には脳の違う部位が働く。

デフォルトモードネットワークとは

デフォルトモードネットワークとは、私たちが休息時に特に活発になる脳のネットワークです。このネットワークは、自己関連、内省、未来への計画、過去の回想などの機能に関連しています。シロシビンがデフォルトモードネットワークDMNに及ぼす影響についての研究は、サイケデリック研究の中核を成すものの一つとなっています。簡単に説明すると、以前失敗してしまった原因について考えるうちに、その考えから抜けだけなくなってしまうことはないでしょうか?あの時ああしなければよかった。同じような状況になったらどうしよう。など、今現在の私が見ているものではない、過去の事柄や起こりうるかもしれない未来への不安に苛まれることもあるでしょう。日常的な事柄をうまくこなしていくために私たちは、脳のデフォルトモードネットワークを使い毎日深く考えることなく、同じパーターンで快適に生活していますが、トラウマやさまざまなきっかけで、考え方が同じ回路にしか行かないようにフックしてしまうと、不安感が増大したり、その不安を癒すために何かの依存症に発展したりしてしまいます。ですので、デフォルトモードネットワークの活動は精神的疾患や心理的健康と密接に関連しているのです。

そして、この研究では、シロシビンがデフォルトモードネットワーク(DMN)を変調することで、これらの疾患の症状に対する新しいアプローチが可能になる可能性があることが示されています。

しかし、変性意識状態で、デフォルトモードネットワーク以外の部位が優位になった時に、一体どんな体験をするのか、というのは非常に主観的で、かつそれを予測することはとても難しい問題なのです。これは意識のハードプロブレム;Hard problem of consciousnessの問題です。つまり脳波を測る脳の研究では探り得ない問題とも言っていいでしょう。このようにシロシビンセッションにおける深淵さについて研究を行うことは非常に難しい問題ですが、しかしセッションと前と後に起こる大きな変化をクライアントさんが体験し、クライアントご自身が治癒をされていく姿を見ることで、私は毎回、シロシビンセッションへの驚きと心と脳への畏怖の念を感じています。

近年研究はとても増えています。これからこのブログではサイケデリックにおける他の研究についてもお伝えしていこうと思います。この研究では言及されていませんでしたが、私が大切だと思うのは、セッションの前に自分が何の問題に取り組みたいのか、それをファシリテーターに伝え、強いインテンションでセッションに挑むことです。デフォルトモードネットワークが優位でなくなった時、レクレーションのサイケデリックセッションとは違い、このシロシビンセッションを、自分自身の問題への答えとしていきたいと願うクライアントさんには、その問題への自身のフォーカスを強く持っていくこと、それがセッションをうまく活かせる上でとても大切です。意識と脳の回


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