サイケデリック物質とは

「サイケデリック物質」と呼ばれるそれを体内に取り入れると幻覚をもたらす不思議な物質たち、これらは日本を含む多くの国々において、いくつかは薬物として認定され、所持と使用を禁止されている物質です。

しかし最近、これらの物質が私たちの脳に影響を与え、そして心の健康に大きな可能性を秘めていることが多くの研究によって明らかになってきています。

私が住むオレゴン州では、指定された設備(サービスセンターと呼ばれる)にて、ライセンスを持ったファシリテーターとともに、クライアントにシロシビンマッシュルームを摂取していただき、サイケデリックを体験していただくことが合法的に認められています。

「サイケデリック(Psychedelic)」という言葉の語源は、ギリシャ語の「ψυχή (psyche)」(心、魂)と「δηλοῦν (deloun)」(明らかにする、顕現する)から来ています。これは、「心を明らかにする」「魂を顕現する」という意味です。シロシビン摂取後、お客様が体験される世界、それは心の中をリアルに深く見つめる体験です。よく言われる極彩色のサイケデリックカラーはその体験の導入であり、その後の体験は個々人の意識のありようによって、夜見る夢とは明らかに違う、現実の世界よりもリアルである、さまざまな現象が立ち現れます。その出会いによって、お客様の心の中が明らかになります。

その体験は事前に予想できるものではありません。しかし、準備セッションを終え、自身の意識に深くコミットメントした上で、安全なセットとセッティングでマッシュルームを服用したとき、つまりお客様の心の状況と、セッションの場がアチューメントして一致した時には、信じられないようなヒーリングをクライアントにもたらしてくれることがあります。心の中だけでなく、ときに、体の治療のための薬を使っても治らなかった慢性病の腰の痛みを抱えた車椅子に乗ったクライアントの方が、2回目のセッション時に一人で歩いてセッションに来られたりというような、身体的な変化も起こったりします。ホリスティックな治癒という視点で見れば、心と体は切り離せないものなのです。

サイケデリックは、通常よく考えられている幻覚を見るという娯楽目的で使うものだけではなく、古代の歴史の中では、シャーマンや司祭が執りごととして行う治癒行為で、心と体の治癒を目的に長い歴史の中で使われてきました。そしてその知恵は、アマゾンやネイティブアメリカン、そして中南米のマヤ文明等の伝統医療の中で今も受け継がれています。その自然に自生するサイケデリックをもたらすアースメディスンが、私たちの心と体にどのような作用をもたらすのかについて、本格的な脳科学的な研究が大きく行われるようになったのは欧米での、ここ十数年の動きなのです。

もともとサイケデリック研究は、合成されたLSDなどの幻覚剤の発見などにより1950年代よりアルバート・ホフマン、ティモシーリアリーやスタニステフグロフなどによって行われていました。そのサイケデリックがもたらす研究は、オルダス・ハクスレーの「知覚の扉」などの出版によって、サイケデリックが引き起こす意識の拡張とその可能性について、人々に広く知られるようになりました。そして60年代には、利用についての厳格な規制がないまま、ベトナム戦争反戦運動、ビートニクスやヒッピームーブメントで一気にLSDを含むサイケデリックがカリフォルニアを中心に広がり、サイケデリックは対抗文化の象徴となりました。

しかし、1970年代にニクソン大統領が麻薬との闘いを宣言、アメリカで薬物法規制が始まったことを皮切りに世界中で薬物所持を禁止する法律が作られていき、それまで行われていたサイケデリック研究もストップし、多くの研究が頓挫していきました。しかし、この数十年、ローランドグリフィッツが率いるジョンホプキンズ大学でのシロシビンなどのサイケデリックの精神医療の研究が認められ、学術研究結果により大きな効果があることが一般に理解されるようになったことが、現在のサイケデリックルネッサンスと呼ばれるムーブメントにつながっています。

アメリカ連邦政府は現在もシロシビンを、規制物質法に基づくスケジュール I 規制物質として認定し、シロシビンの製造、流通、所持を禁止しています。にもかかわらず、近年の研究によると、シロシビンには依存性がほとんどないことが示され、さらにうつ病、不安、終末期の苦痛、さまざまなトラウマ、問題のある物質使用の症状を改善する可能性があることが明らかになってきています。これを鑑みて、オレゴンではあるオレゴン保健局が認定した文脈の中でのセッションが認められるようになりました。このブログではシロシビンファシリテーターである私が、シロシビンマッシュルームを含めた、サイケデリックについて、いろいろなお話をお伝えしていきたいと思います。


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